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「セピア色の宝物」 5月29日掲載
セピア色の宝物
 
 青井阿蘇神社の例大祭「おくんち祭」。昔はどうだったんだろう。―古写真を探しましたが、神社にはほとんど残っていませんでした。
 神幸式の行列が練り歩く沿道筋の家々に尋ねても、球磨川の洪水で被害に遭ったとのこと。神社総代たちに相談すると、七十代の一人が「若いころ、カメラに熱中していたからあるだろう。当時の仲間にも声をかけてみる」と言ってくれ、およそ五十年前の数点が持ち込まれたのでした。
 セピア色の写真には、当時の人たちの笑顔、熱気、懐かしい街並み、初めて目にする光景までもが生き生きと写し出されていました。
 「他にも見たい、発見したい」との思いが強くなり、二○○二年から続けている「祭り写真コンテスト」にセピアの部を設けました。毎回数点の応募ですが、神幸式の様子だけでなく、神楽や奉納スポーツ大会、結婚式の風景など、今では人吉球磨地域以外からの出品もあります。
 入賞作品はお正月に展示し、多くの方にご覧いただいています。「昔はこんな街並みだった。懐かしい」「このおみこしの子ども、うちのお父さんじゃないかな」などの声を耳にします。
 アルバムの中で大切に保管されてきたセピア色に輝く笑顔や、その時々を生きた人たちの思い出は、今では青井阿蘇神社の歴史の一ページを飾るとともに、地域の財産にもなっているのです。

| - | 08:00 AM | comments (0) | trackback (521) |
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| - | 07:59 AM | comments (0) | trackback (477) |
足元の掘り起こし 5月22日掲載
足元の掘り起こし

 青井阿蘇神社の例大祭は、十月三日から十一日まで斎行(さいこう)されますが、「おくんち祭」の名称どおり、九日の神(しん)幸式(こうしき)が特ににぎわいます。約二千人が時代絵巻さながらに、市内の目抜き通りを練り歩き、沿道は参拝者であふれます。
人吉球磨の地域住民にとって、毎年待ち望まれてきた最大の楽しみでしたが、以前の賑わいには程遠い一時期を経験したことがありました。「年に一度の祭りのにぎわいさえも取り戻せないで、街づくりが成功するはずがない」と取り組んだのが、祭りマニュアルの作成です。祭り期間中に執り行われる神事や行事の解説をはじめ、行列所役(しょやく)や諸祭具の難解な名称と意味をわかりやすくしたのです。古い時代の文献や写真、言い伝えも掘り起こしました。
祭りの大切さや楽しさを再認識した上で、「オマツーリズム」と名づけた祭り体験プログラムを都市部の人たちに提供し、交流しました。価値を認めていなかったモノやコトにまで注目が集まるようになり、地域住民と都市住民が一体となって掘りおこした祭りの魅力は、インターネットライブ中継で二○○六年、全世界に向け発信され、反響を呼んだのでした。
今、求められている地域の価値や魅力とは一体何なのか。足元を掘り起こすことで、新たな発見につながるかもしれません。

| - | 11:04 AM | comments (1) | trackback (276) |
「活かす」街づくり 5月15日掲載
イカスまちづくり

 街づくりに興味を持ち始めた二十代半ば、「地域のアイデンティティー」という言葉がもてはやされていました。個性や理念といった意味のこの言葉は、他地域との差別化をはかり、この街でしか味わえない独自性を追求しようというものです。
 当時、この人吉球磨でも多くのまちづくり団体が活動していました。意見交換会で交流もしましたが、「新たにつくる」という議論が多かった気がします。  
私は街並みの形成過程や、現状の共通認識で足元を見直すことが最優先との思いが強く、編集長となってタウン情報誌を発行し、独自の街づくりを模索した時期もありました。
人吉球磨には国指定十三件、県指定八件の重要文化財をはじめ、鎌倉時代から江戸時代までに造られた多数の歴史的建造物が点在し、中世建造物の博物館とも形容されています。どれもが街の大切なシンボルとして、これまでにいくたびかの修復が加えられ、個性ある姿を今に伝えています。
ひと昔前まで米蔵として利用された石蔵が、地域のコミュニティースペースやツーリズムの拠点として、また古民家を再利用した懐かしい雰囲気の食事どころが、人気を集めています。新たにつくることも大切ですが、今あるもの、役目を終えたものを再生させる。人吉球磨にはそんな「活(い)かす街づくり」が似合うと思います。

| - | 11:02 AM | comments (0) | trackback (459) |
「じゅぐりっと」 5月8日掲載
じゅぐりっと

 待ちにまったSL人吉が熊本―人吉間の運行を始めました。人吉駅発着時の汽笛が、ここ鎮守の森にもこだまします。
 大正十一年生まれで、数えで八十八歳の米寿を迎えた通称ハチロクは、昭和五十年に廃車されるまで湯前線を走り、昭和六三年から平成十七年までは「あそBOY」として雄大な阿蘇の原野を駆けたのでした。
 SL運行に合わせ、くま川鉄道は郷土の魅力を車内にちりばめたリニューアル車両を導入。市内周遊バスは、各所で開催中のSL歓迎イベント「人吉じゅぐりっと博覧会」の移動手段としても活躍しています。
 「じゅぐりっと」とは球磨地方の方言で、「順に巡り回る」といった意味です。西洋歯科医学の草分けで、宮内庁侍医を長年務めた人吉出身の一井(いちのい)正典(まさつね)氏が有名にしたと言われています。
 高山歯科医学院(現・東京歯科大)の講師時代、一井氏がたびたび口にする「じゅぐりっと」の言葉に、学生から「先生、それは何語ですか」と質問を受けた逸話が伝えられ、肥薩線が開通したころの、およそ百年前の出来事が、イベントの名になったことに深い意義と縁(えにし)を感じます。
 九州新幹線の全線開通まで二年をきりました。短時間で鹿児島へ、帰りは山越えの風情と球磨川の絶景を満喫する「南九州じゅぐりっと」の旅。ここでしか味わえないおもてなしの準備が急がれます。

| - | 09:45 AM | comments (0) | trackback (610) |
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